久しぶりにいい映画を見た(といっても自宅でですが)。『ブロークバック・マウンテン』(①http://www.wisepolicy.com/brokebackmountain/ ②http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail/tymv/id323840/)だ。

2005年に発表されたこの映画は、数々の映画賞を獲得したらしいが、私は全く前知識がなかった。たまたまHDDレコーダーに取っておいたこの作品を「何だ、これは」という感じで見ただけだ。

だから、美しいワイオミング州の山々に囲まれて若い二人の男が急に愛し合いはじめたときには、びっくりした。この急変ぶりは、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(http://www.02.246.ne.jp/~ftft/movie2-5.html)並の衝撃だった。

しかし、この映画は「ホモ映画」ではない。まして「普遍の愛」の映画でもない。

少年時代の感傷の質を、大人が大人の行動と言葉で再現した映画が、この映画のすべてだ。この映画は、ふるさとの愛を再現している。たぶん、この映画を評価する人たちは、性愛以前の自分の幼少時代を思い出しているのだと思う。

幼少時代は誰もがホモセクシャルだ。主人公二人の男同士がブロークバック・マウンテンの高原で抱き合い転げ回る。少年時代はみんなそうだ。

そしてそれを封印しながら、みんな〈大人〉になって行く。異性を愛し、家族を持ち、遠くへ旅立っていく。

この二人も“普通の”人間と同じように、異性を愛し、家族を持ち、遠くへ旅立っていく。

この映画は、同性愛か、異性愛かという空間的差異が主題になっているのではなくて、1人の男性が、自立していく様(人生という時間軸)を二人の男性の“現在”に押し込めた映画だ。

だから、人間が成熟してから感じる悲哀のすべてが、この映画の中に濃密な仕方で閉じこめられている。特に最後半の山の中での二人のシーン(1時間40分~1時間50分目あたり)は圧巻だ。私は、映画を見ながら息を呑んだのは、このシーンがはじめてだ。

特に音楽がない無音の会話だけのシーンがこれほど重く切なく感じるシーンは珍しい。この無音の伴奏(無音なのに、その無音の音が大きい!?)は、人間の無意識の古層の衝撃のようだ。

人間の悲哀(関係の悲哀)の根源は幼児期にあるかのように、作者は訴えかけている。むしろ性愛(大人同士の異性愛)は、幼少時の悲哀を隠すかのように存在しているものなのだ。

家族からの離反、子供の成長(子供の親からの離反)、そういった孤独を主人公ヒース・レジャー(http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail/typs/id293267/)は、まるで幼少期の孤独を喚起させるかのように演じている。

ヒースの最後のせりふは「ジャック、永遠に一緒だ」だった。これはホモ相手にいった言葉ではなく、幼少期の友達へのそれだった。そのせりふと並んで「ブロークバック・マウンテン」が映し出される。それは“ふるさと”の山々を暗喩している。

ふるさとというのは、たぶん、成熟した男女の愛(や家族)にとっては、いつでも敵なのだ。そのぶん、この映画は、ホモセクシャルなだけだ。

この映画をホモやゲイだけに語らせておくのはもったいないくらいのすばらしい映画です。ほとんど(それ自体で)文学のような映画だった。見てない人は是非見てください。

※TSUTAYA DISCAS(入会金無料)で借りる場合はこれ(http://www.discas.net/cgi-bin/netdvd/s?ap=c_goods_detail&goods_id=087673632)。

※AMAZONで買う場合は、これ(http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BD%A5%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3-%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%A0%EF%BD%A5%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E3%83%92%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC/dp/B000EXZA1W/ref=sr_1_1/249-7766465-8998740?ie=UTF8&s=dvd&qid=1193540146&sr=1-1)。

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感想欄

  •  はじめまてお便りさせて頂きます。

     私も、この映画に出会ったのは、この年の夏のことでした。

    何気なくテレビを観ていたのですが、えっ、これって何? というのが第一印象でした。

     イニスが、ジャックと別れて、建物の陰で慟哭する。本当に驚きました。ただ者ではないな・・この映画はと。

     あちこちブログを巡りましたが、何といっても時期が遅すぎました。

     様々が解釈がありますが、どうももうひとつ納得できず、"無いものは創ればいい"と思い、ブログを書き始めました。
     
     芦田さんのような感想を読んだのは初めてです。新鮮な印象をもたれているようで、とても参考になりました。

     よろしければ、どうぞいらしてください。

     トラック・バックさせて頂けたら、うれしいのですが・・・

  • サイト、立ち寄らせて頂きました。入り込みすぎですよ、と言いたいくらいのサイトですね。またゆっくりとコメントしたいと思います。

    トラックバック、結構ですよ。

  • ありがとうございます

     本当に、入り込みなのです。でも、これまでのこの映画の感想を読んでいますと、放っておけません。

     映画に原作を持ち込むことには異論もあろうかと思いますが、脚本家がほぼ原作通りに書けたとコメントしていますので、原作、脚本、映画をひとつの作品群として捉えてもいいのかな、と思います。

     大人への旅立ちという印象"青春の門"が、思い浮かんだこともあります。"性愛以前のふるさと"考えてみます。

     もっと素晴らしさが評価されてもよい作品だと思います。

  •  トラックバックさせて頂きました。

     先生のご感想を参考に、もう一度自分なりのテーマをを整理してみました。語彙も乏しく、どうもわからん、とお思いになるかも知れません。

     ご教授いただければ幸いと存じます。

  • TB(トラックバック)公開して頂きありがとうございます。

    この映画の結語がそろそろみえてきました。

    彼らの関係が辿ったあとを素直に着いていくことで、感じられるメッセージがありそうです。

    それは、微かですがクリアーな響きがあります。

    高度な精神活動としての感情移入という手法が、ここまでのメッセージを想起させるしいう意味でも、優れた作品だと思います。

    「Childressに住むジャック(26)」を書きましたので、TB公開、宜しければよろしくお願いいたします。

    若い人達に、泣いて欲しい作品かも知れません。

  • ヤフーの映画レビューで、先生の感想発見しました。お正月にご覧になったのでしょうか。私のこの映画のブログも、ついに31ページに膨らんでしまいました。

    やっと、"まどろみの抱擁"部分、と言っても、原作訳なのですが、たどり着きました。"まどろみの抱擁/時間と記憶"のタイトルで公開しましたので、よろしければどうぞいらしてください。お待ちしております。

  • 大変興味深く拝読致しました。とりわけ「性愛(大人同士の異性愛)は、幼少時の悲哀を隠すかのように存在している」の下りに映画の魅力が要約されているように思いました。

    本記事の主題からは離れるのですが、「この映画は、同性愛か、異性愛かという空間的差異が主題になっているのではなくて、1人の男性が、自立していく様(人生という時間軸)を二人の男性の“現在”に押し込めた映画だ。」という下り、「同性愛か、異性愛かという空間的差異」とございます。

    こちらの「空間的」の含意につき、ご教示いただければ大変嬉しく存じます。

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